ベトナム不動産を法人で所有できるか:外国人の法人保有と『名義借り』の罠(2026)
外国人購入者から最もよく受ける質問のひとつが「現地の人のように、法人を作れば土地や家を所有できるのでは?」というものです。もっともな疑問ですが、正直な答えはネット上の『はい/いいえ』よりも繊細です。外資系企業は、実体のある登録事業のためであれば土地使用権を保有し建物を所有できます。しかし法人は、個人として『住まいを持つ』『土地を所有する』ための便利な近道には、ほぼなりません。この記事では、法人スキームが実際に何をするのか、いつ妥当でいつ個人リースホールドのほうが簡単か、そして不注意な買い手が陥る違法な名義借りの罠を、2026年基準で整理します。
本記事は一般的な情報であり、法務・税務・投資上の助言ではありません。土地法(2024年)・住宅法(2023年)・不動産事業法(2023年)などの制度や数字は目安で変動します。実際のご判断の前に、必ずベトナムの資格を持つ弁護士・税理士にご相談ください。
まず大前提:土地は「誰も所有していない」
ここから始めると混乱の大半が解けます。ベトナムでは、外国人も、ベトナム市民も、ベトナム法人も、土地そのものを所有しません。土地は全人民の所有とされ、国が管理します。人や企業が実際に持つのは**土地使用権(LUR)**で、その証明が所有証明書(ピンクブック)です。
つまり「法人を作れば土地を所有できる」という言い方は不正確です。法人にできるのは、せいぜい土地使用権を保有すること——通常は用途と期間が定まった国からのリースです。この原則は土地法2024(2025年1月1日施行)でも再編されただけで、廃止されていません。個人名義で外国人が何を持てるかは、対の記事外国人は土地を持てるかを参照してください。
個人でも意外と十分に持てる
法人に手を伸ばす前に、個人でできることを理解しましょう。多くの買い手にはそれで十分です。住宅法2023のもとで、合法的に入国した外国人個人は、適格な商業住宅プロジェクト内のマンションや一部の戸建て(社会住宅や安全保障制限区域は不可)を購入・所有できます。主な特徴は次のとおりです。
- リースホールド型の期間:所有は50年、原則1回更新可で、通算およそ100年まで。
- 30%ルール:外国人は1棟あたり総戸数の30%まで所有可、戸建ては行政区単位の上限あり。詳細は外国人30%枠の解説へ。
- 土地は自分名義にできない:所有するのは住戸と期間の定まった権利で、下の土地ではありません。
住まい、セカンドハウス、賃貸用マンションなら、この個人ルートはクリーンです。売買契約に署名し、自分名義の証書を受け取れば完了——法人会計も監査も年次申告も不要です。
外資系法人(FIE)にできること・できないこと
外資系企業(FIE)——おおまかに、外国資本が相当程度入り、企業法・投資法に基づき設立された会社——は、実体のある法的な受け皿です。土地法2024のもとで、FIEはいくつかの経路で土地使用権にアクセスできます。
- 国からの土地リース(年払い)または一括払いの期間リース(一括のほうが期間中の譲渡・転貸・抵当の権利が広い)。
- 一定の住宅プロジェクトでの土地使用料を伴う土地割当。
- 工業団地・工業クラスター・経済区内での土地使用権と付随資産の譲受——従来はリース・転貸中心だったのが2024年法で拡大した点。
リース期間は目安で最長50年・延長可、不利地域の案件では最長70年程度まで。法人は、その土地上に建設・取得した建物・資産を期間中所有します。
一方、法人ができないのは、「ここに住みたい」を「土地を永久所有した」に変えることです。FIEは登録した事業目的(ホスピタリティ運営、開発、商業スペースの賃貸など)のためのもので、個人のマンションを受動的に入れておく箱ではありません。実業が不動産なら不動産事業法2023(2025年1月施行)にも留意を——旧来の一律最低資本(200億ドン)が撤廃され、開発業者向けの最低自己資本比率ルール(大規模案件は概ね15%以上、小規模は20%以上)に変わったとされます。数字は目安で変動するため専門家に確認してください。
正直なコスト・コンプライアンスの実像
「とりあえず法人を作れば」という助言が飛ばす部分がここです。FIEは一度きりの費用ではなく、継続的な義務の装置です。
| コスト/義務 | 想定(目安・2026年) |
|---|---|
| 設立(IRC+ERC) | 投資登録証→企業登録証。通常は数週間 |
| 資本拠出 | 定款資本はERCから概ね90日以内に払込 |
| 社印+電子署名 | 小額の一時費用(電子署名は数年分で数百ドル程度) |
| 記帳 | 毎月の会計費用が継続 |
| 監査(義務) | FIEは財務諸表の年次独立監査が必須——年4桁ドル規模が一般的 |
| 法人税(CIT) | 標準20%、四半期の暫定納付 |
| VAT | 対象活動に標準10%、定期申告 |
| その他 | 外国契約者源泉、ライセンス更新、投資報告等 |
マンション1戸のためには、この負担は不釣り合いに重いものです。個人なら1枚の証書・監査なしで持てる資産に、毎年数千ドルのコンプラ費用を払うことになります。だからこそ住まい目的では、**法人は通常『間違った道具』**です。数字は目安で頻繁に変わるため、ベトナムの会計・税務事務所に最新見積を取ってください。
法人が本当に向く場合
法人が『正解』になるのは、回避策としてではなく、実際の事業上の理由があるときです。
- その物件で実業を営む——ホテル、サービスアパート、飲食、コワーキング、クリニック等。どのみち法人が必要で、そこが商業物件を保有する。
- 商業資産のポートフォリオ——オフィス・店舗・倉庫・工業スペースを法人所有し、資金調達やパートナー参画・株式売却を行いたい。
- 開発——不動産事業法のもとで開発業者としてプロジェクトの土地使用権や許認可を保有する。
- 工業団地・経済区の土地——製造・物流で、団地内のLURのリースや譲受を受ける。まさにFIE向きの用途。
いずれも法人は個人所有の偽装ではなく、実際の事業の正当な運営体です。事業が活動を生むからこそ、コンプラ費用が正当化されます。
個人 vs 法人:早見表
| 観点 | 外国人個人(リースホールド) | 外資系法人(FIE) |
|---|---|---|
| 典型用途 | 住まい・セカンドハウス・賃貸1戸 | 実業・商業ポートフォリオ・開発 |
| 保有するもの | 住戸/戸建てを約50年(更新可) | 土地使用権(リース/割当/譲受)+建物、期間中 |
| 土地 | 所有せず・自分名義でない | 所有せず・LURを法人が期間保有 |
| 住宅の外国人枠 | 30%/行政区上限の対象 | 別トラック・枠の抜け道ではない |
| 設立の手間 | 低い(契約・証書取得) | 高い(IRC・ERC・資本・許認可) |
| 年次コンプラ | 最小限 | 監査・法人税・VAT・報告=重い |
| 維持費 | 非常に低い | 年数千ドル規模が一般的 |
| 向くとき | 住む/シンプルな賃貸 | 実業/開発をする |
違法な『名義借り(ノミニー)』の罠
ここが危険な部分です。外国人は土地を持てず住宅に枠があるため、一部の買い手は「名義借り」に誘惑されます——ベトナム人個人、あるいは書類上はベトナム法人だが実態は外資の会社に保有させ、私的な裏合意で外国人が『真の所有者』とする仕組みです。
これは構造ではなく、リスクです。 ベトナムの法律は証書に記載された名義人を所有者と認めます。所有ルール回避のための裏合意は、裁判所に仮装取引として無効と判断され得ます。そうなると——
- 外国人には資産への強制可能な請求権がない(保護されるのは登録名義人だけ)。
- 売却・借換え・価値回収は名義人の協力に完全依存。
- 行政罰、深刻な場合はより重い結果のリスク。
外資資金の『ベトナム法人』ペーパーカンパニーを制限回避のためだけに作るのは、同じ罠の法人版で、同じ理由で破綻します。「こっそり土地を持てる」「30%枠を破れる」と法人を売り込む相手がいたら立ち去ってください。この手口はベトナム不動産の詐欺・危険信号でも扱っています。正当な代替は地味な2つだけ——持てる場合は個人で持つか、実業のために適正にライセンスされたFIEを作るか。誠実な第3の道はありません。
決め方と確認
シンプルな判断手順です。
- 本当の目的を言語化する。住まい/賃貸なら個人寄り。実業/開発なら法人寄り。
- 適格性を確認する。マンションなら外国人適格・枠内か。法人なら活動が外資に開放され資本/条件を満たすか。
- 購入時だけでなく生涯コストで見積る。法人は保有する毎年の監査・税・会計を含める。
- 対象資産と売主のデューデリを行う——デューデリ・チェックリスト。
- 独立した専門家の確認を取る。構造と証書はベトナムの弁護士、数字は税理士に。
仲介や『手配屋』が、売りやすさで構造を選ぶのに任せないこと。構造は『あなたの目的』と法律に従うべきで、その逆ではありません。
まとめ
外国人にとって、法人は『土地を所有する近道』ではありません。誰も土地を所有せず、法人が持てるのは土地使用権のみ。住まい・賃貸1戸なら個人リースホールドが最もクリーンで、監査や年次申告の重い法人は不釣り合いです。法人が正当なのは、ホスピタリティ・商業ポートフォリオ・開発など実業があるとき。そして名義借り(ノミニー)は構造ではなくリスクで、拠出金と権利を失いかねません。目的で選び、送金前に弁護士・税理士の確認を取ってください。
本記事は一般的な情報提供であり、法務・税務・投資上の助言ではありません。制度・数字(土地法2024/住宅法2023/不動産事業法2023/法人税・VAT率等)は目安で変動します。実際の不動産・法人の決定前に、必ずベトナムの資格を持つ弁護士・税理士にご相談ください。
Happy Landはベトナム新築一次販売のディストリビューターとして、あなたの状況にどのルートが合うか——『法人は不要』という答えも含めて——正直にお伝えします。まずは物件一覧で外国人が買える適格物件をご覧いただき、Zalo / WhatsApp でやりたいこと(住まい/賃貸/事業)をお知らせください。現実的な選択肢をご案内し、独立した法務・税務の専門家におつなぎします。
よくあるご質問
マンション1戸を持つためだけに法人を作るべきですか?
通常はオーバースペックで、適切な手段ではありません。外資系企業(FIE)は登録した事業目的のために設立するもので、住居を受動的に持つための箱ではありません。年次の独立監査、記帳、法人税、各種申告など継続的なコンプライアンス費用がかかります。1戸のマンションなら、住宅法2023に基づく適格な商業プロジェクトでの個人の50年(更新可)リースホールド所有のほうが、ほぼ常に簡単で安上がりです。法人が妥当なのは、実際の不動産・ホスピタリティ事業を営む、複数の商業資産を持つ、開発を行う、といった場合です。個別事情はベトナムの弁護士に確認してください。
外資系法人ならベトナムの土地を所有できますか?
いいえ。外資・内資を問わず、いかなる主体も土地そのものを所有しません。ベトナムでは土地は全人民の所有で、国が管理します。外資系企業(FIE)が持てるのは土地使用権(LUR)で、通常は国からのリース(年払いまたは一括払い)、また土地法2024のもとでは工業団地・経済区内での土地使用権と付随資産の譲受などです。法人は土地上の建物・資産を所有し、LURをリース期間(目安で最長50年・延長可、不利地域の案件では最長70年程度)保有します。
法人はマンションの外国人30%枠の抜け道になりますか?
なりません。住宅の1棟あたり外国人枠や戸建ての行政区単位の上限は外国人購入者を想定した制度で、外資系企業で登録しても無制限の住戸が解錠されるわけではありません。実業のFIEが商業用不動産を取得するのは、不動産事業法・土地法に基づく別トラックで、それぞれ独自の条件があります。『枠回避になる』と法人スキームを売り込む相手がいたら危険信号と考え、まず独立した法的助言を得てください。
違法な『名義借り(ノミニー)』の罠とは何ですか?
外国人が資金を出し、ベトナム人個人や『書類上はベトナム法人・実態は外資』の会社に不動産や土地使用権を保有させ、裏で『本当の所有者は外国人』とする私的合意を結ぶ仕組みです。ベトナムの法律は証書に記載された名義人を所有者と認めます。制限を回避するための裏合意は、裁判所に仮装取引として無効と判断され得ます。そうなると外国人は資産への請求権を失い、名義人の協力なしに売却・借換え・回収ができず、罰則等のリスクにもさらされます。これは『構造』ではなく『リスク』です。
不動産保有目的の外資系法人の維持コストはどのくらいですか?
設立(投資登録証IRC+企業登録証ERC、社印、電子署名)に加え、継続負担が想定外に重い点に注意です。毎月の記帳、外資系企業に義務づけられる財務諸表の年次独立監査、四半期の暫定法人税、VAT申告などが続きます。監査だけでも年に4桁米ドル規模が一般的とされ、会計費用は別途です。数字は目安で変動するため、一時費用でなく毎年の専門家費用を見込み、ベトナムの会計・税務事務所に最新見積を取ってください。
結局、ほとんどの外国人はどちらを選ぶべきですか?
住居や賃貸用のマンションが目的なら、適格な商業プロジェクトの適格住戸を個人でリースホールド所有するのが最もクリーンです。ホスピタリティ運営、商業資産のポートフォリオ、開発など実際の事業を営むなら、適正にライセンスされた外資系企業(FIE)が正当な受け皿です。ほぼ全員にとって誤答は、住居を保有するためだけに作るノミニーやペーパーカンパニーです。目的に基づいて決め、送金前にベトナムの弁護士・税理士に構造を確認してもらってください。
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