海外からベトナム不動産を管理する2026:遠隔オーナーのガイド
ベトナムで物件を買ったものの、自分は日本に住んでいる——という外国人オーナーは少なくありません。結論から言えば、ベトナムに常駐していなくても、賃貸に出して家賃を得て、適切に納税し、利益を日本へ送ることは十分に可能です。ただし「誰かに任せきり」では外貨送金や納税でつまずきます。本ガイドは、海外(日本)在住の不在オーナーがホーチミン市の物件を遠隔管理するための実務を、2026年時点の最新情報で整理したものです。
遠隔オーナーが直面する3つの壁と全体像
海外から物件を回すうえで本質的な課題は、(1) 物理的に現地にいない、(2) ベトナム語・現地手続きの壁、(3) 外貨を適法に日本へ持ち出す「足跡(マネートレイル)」の3つです。これらを解くための土台が次の3点セットです。
- 信頼できる現地パートナー(賃貸管理会社または代理人)
- ベトナム国内の銀行口座(家賃受取と納税・送金の起点)
- 公証済みの委任状(Power of Attorney)(税務・行政手続きの代行根拠)
この3つが揃えば、入居者募集から家賃回収、メンテナンス、公共料金、入居者の一時滞在登録、納税までを現地で回し、オーナーは日本から監督するという体制が組めます。
賃貸管理会社の探し方と見極め方
ホーチミン市には、売買仲介から賃貸管理までを一気通貫で行う会社(日系・ローカル・外資系)が複数あります。不在オーナーにとって重要なのは「物件を見つける力」より「物件を回し続ける力」です。見極めの観点を整理します。
- 日本語または英語で報告が来るか:月次の入金・経費・空室状況のレポートがあるか。
- 業務範囲が契約書で明文化されているか:口頭の「全部やります」は危険。後述の業務一覧を契約に落とし込む。
- 税務代行・送金サポートの実績:外国人オーナーの納税申告と海外送金を扱った経験があるか。
- 送金の透明性:家賃をオーナーの口座に直接入れるのか、一旦管理会社が預かるのか。預かり型は資金の透明性に注意。
- 建物管理会社(PMC)との別物理解:あなたが委託する「賃貸管理会社」と、マンション全体を運営する「建物管理会社」は別物。両者を混同しないこと。
賃貸管理会社の業務内容と手数料の目安
フルサービス委託に含まれる典型的な業務と、ホーチミン市での費用の目安は次の通りです。料率・金額は会社・物件・契約により変動するため、必ず契約書で確認してください。
| 業務 | 内容 | 費用の目安(変動) |
|---|---|---|
| 入居者募集・テナント付け | 広告掲載・内見対応・審査・契約 | 家賃の0.5〜1ヶ月分/回 |
| 家賃回収・送金 | 毎月の集金、オーナーへの送金、滞納督促 | 月額家賃の概ね6〜12% |
| メンテナンス手配 | 修理業者の手配・立会い | 月額手数料に含む+工事費に10〜15%上乗せの例あり |
| 公共料金・管理費の支払い代行 | 電気・水道・建物管理費の窓口 | 月額手数料に含むことが多い |
| 入居者の一時滞在登録 | 公安への届出代行 | 月額手数料に含む/別途の例あり |
| 納税代行(要委任状) | VAT・個人所得税の申告・納付 | 別途・実費+手数料が一般的 |
ざっくり言えば「月額家賃の1割前後+初回のテナント付け費用」が遠隔管理のランニングコストの中心です。
自主管理 vs 委託:どちらを選ぶか
| 比較項目 | 自主管理(オーナー直接) | 委託(管理会社) |
|---|---|---|
| コスト | 手数料ゼロ | 月額家賃の6〜12%+初期費用 |
| 手間・時間 | 大きい(時差・言語・現地往復) | 小さい |
| 入居者対応 | 自分で深夜の故障対応も | 現地が一次対応 |
| 納税・送金 | 自力で税ID取得・申告 | 委任状で代行可能 |
| 空室リスク | 募集力に依存 | 募集網を活用できる |
| 向いている人 | 現地に頻繁に来る・ベトナム語が分かる | 日本在住・本業が忙しい人 |
日本に常駐する不在オーナーの場合、現実的には委託が基本線です。家賃の1割前後のコストで、時差・言語・行政手続きのリスクを大きく減らせます。
委任状(Power of Attorney)の使い方
不在オーナー運用の心臓部が委任状です。ベトナムでは、税ID取得・納税申告・各種行政手続きを、オーナー本人に代わって現地の代理人(管理会社や税務コンサル)が行うために、公証済み(notarized)の委任状が求められるのが一般的です。
ポイントは範囲を絞ることです。「すべてを白紙委任」ではなく、(1) 納税申告・納付、(2) 公共料金・建物管理費の支払い、(3) 一時滞在登録、といった具体的な行為に限定し、売却や抵当設定など重大な処分権は含めないのが安全です。委任状の有効期間・撤回方法も明記しておきましょう。様式・公証要件は変動するため、現地の公証役場や専門家で最新の要件を確認してください。
家賃回収と海外送金(外貨トレイル)
家賃の流れは「ベトナム口座で受取 → 納税 → 適法所得として日本へ送金」が原則です。送金時、銀行は資金の出所を示す書類を求めます。ここで効いてくるのが、最初から一貫して残すマネートレイルです。
- 賃貸借契約書(金額・期間が明記されたもの)
- 毎月の家賃入金記録(ベトナム口座の取引明細)
- 納税記録・納税証明
- パスポート・在留関連書類
これらが揃っていれば、賃貸所得の送金手続きはスムーズになります。逆に現金手渡しで記録がない家賃は、後で送金できず「ベトナム国内に塩漬け」になりがちです。賃料は必ず銀行口座経由で受け取りましょう。送金実務の詳細は不動産売却資金の海外送金で扱っています。賃貸運用そのものの始め方はベトナムでの賃貸運用(貸し出し)を、収益性の目安はホーチミン市の賃貸利回りをご覧ください。
管理費・修繕基金の支払いとピンクブックの保管
物件を「持っているだけ」でも継続的にかかる費用があります。これは賃貸管理会社の手数料とは別物です。
- 建物管理費(共益費):エレベーター・警備・清掃・共用設備の維持。床面積に応じ、概ね1㎡あたり月0.5〜1.5米ドルが目安(物件・立地で変動)。
- 修繕基金(Sinking Fund):共用部の大規模修繕用。ベトナムでは購入時に物件価格の約2%を一括前払いするのが一般的。
- 公共料金:空室時も基本料金が発生することがある。
これらの支払いを滞らせると、管理組合とのトラブルや遅延ペナルティにつながります。遠隔オーナーは、管理会社に支払い代行を組み込んでおくと安全です。保有コスト全体はベトナム不動産の保有コストで詳しく整理しています。
ピンクブック(土地使用権・住宅所有権証明書)は所有権を示す最重要書類です。原本を管理会社に預けっぱなしにするのはリスクが高く、原本はオーナー自身が安全に保管し、手続きには公証コピーや限定委任状で対応するのが基本です。
入居者の一時滞在登録と賃貸所得の納税義務
一時滞在登録:ベトナムでは賃借人が居住を始める際、地域の公安(警察)へ一時滞在の届出を行う義務があり、貸主側にも協力・届出の責任があります。届出は契約・入居後ごく短期間(24時間以内が目安)に求められ、怠ると双方に罰金の可能性があります。海外在住オーナーは、この届出を管理会社が代行する形にしておくのが安全です。
賃貸所得の納税:年間賃料収入が非課税ラインを超えると、VAT(付加価値税)と個人所得税(PIT)が課されます。2026年は閾値が段階的に引き上げられており、整理すると次の通りです(金額・税率・適用時期はいずれも目安であり変動します。必ず最新の確定情報を専門家に確認してください)。
| 項目 | 内容(2026年・目安/変動) |
|---|---|
| 非課税ライン | 2026年時点で年VND5億(2026年1月1日にVND2億、改正個人所得税法によりVND5億へ段階的に引き上げ) |
| VAT | 閾値超過分に概ね5% |
| 個人所得税(PIT) | 閾値超過分に概ね5% |
| 事業免許税(BLT) | 2026年1月1日から賃貸活動について廃止 |
| 申告・納付 | 税IDの取得が必要。半期ごと(7月31日/翌1月31日)または年次(翌1月31日)が目安 |
| 代行 | 公証済み委任状で管理会社・税務コンサルが代行可 |
加えて、日本居住者であれば日本側でも賃貸所得の申告義務が生じ得ます。ベトナムと日本の二重課税の調整(外国税額控除など)も絡むため、両国の税務専門家への相談が前提です。
遠隔管理チェックリスト
| # | チェック項目 | 状態 |
|---|---|---|
| 1 | ベトナム国内の銀行口座を開設したか | ☐ |
| 2 | 信頼できる賃貸管理会社/代理人を選定したか | ☐ |
| 3 | 業務範囲・手数料を契約書で明文化したか | ☐ |
| 4 | 公証済み委任状(範囲限定)を準備したか | ☐ |
| 5 | 賃貸所得用の税IDを取得したか | ☐ |
| 6 | VAT・PITの申告/納付フローを決めたか | ☐ |
| 7 | 家賃は必ず銀行口座経由で受け取る設定か | ☐ |
| 8 | 契約・入金・納税の記録(マネートレイル)を残しているか | ☐ |
| 9 | 建物管理費・修繕基金・公共料金の支払い代行を組んだか | ☐ |
| 10 | 入居者の一時滞在登録の運用を決めたか | ☐ |
| 11 | ピンクブック原本を自分で安全に保管しているか | ☐ |
| 12 | 日本側の申告・二重課税調整を専門家に確認したか | ☐ |
このチェックリストが一通り埋まれば、海外からでも安定した遠隔運用の体制が整います。
本記事は2026年6月時点の一般的な情報であり、法務・税務・移民(ビザ)に関する助言ではありません。税率・非課税ライン・各種手続き・委任状の要件・送金規制は頻繁に変動し、個別事情によって扱いも異なります。実際の運用にあたっては、必ずベトナム・日本双方の弁護士・税理士・公証役場など有資格の専門家にご相談ください。
ホーチミン市での遠隔運用や管理体制づくりについてお悩みなら、Happy Land(一次販売のディストリビューター)が現地の信頼できる管理パートナー探しから運用設計までお手伝いします。お気軽に Zalo / WhatsApp でご相談ください。物件選びから始めたい方は物件一覧もどうぞ。
よくあるご質問
ベトナムに住んでいなくても物件を賃貸に出して管理できますか?
はい、可能です。多くの外国人オーナーが日本など海外に居住したまま、現地の賃貸管理会社や代理人に委託して遠隔運用しています。鍵となるのは、信頼できる管理会社、現地ベトナム銀行口座、そして税務・行政手続きを代行してもらうための公証済み委任状(Power of Attorney)の3点です。入居者募集・家賃回収・メンテナンス・公共料金・一時滞在登録・納税までを委託契約でカバーできます。
賃貸管理会社の手数料はどれくらいが目安ですか?
ホーチミン市の相場では、フルサービス(入居者対応・家賃回収・メンテ手配)の管理手数料が月額家賃の概ね6〜12%、加えて新規入居者を付ける際のテナント付け手数料が家賃0.5〜1ヶ月分というのが一般的な目安です。修繕の手配で工事費に10〜15%上乗せする会社もあります。これらは会社・物件・契約により変動するため、必ず契約書で範囲と料率を明文化してください。
ベトナムの賃貸所得には税金がかかりますか。日本人オーナーの義務は?
年間賃料収入が一定の非課税ラインを超えると、付加価値税(VAT)と個人所得税(PIT)が課されます。2026年は段階的に閾値が引き上げられ、2026年1月1日からVND2億、2025年改正個人所得税法により2026年7月1日からVND5億となり、2026年時点の非課税ラインは年VND5億です(税率はそれぞれ概ね5%+5%)。閾値・税率・適用時期は変動するため、最新の確定情報と自国(日本)側の申告義務は、必ずベトナム・日本双方の税務専門家に確認してください。
家賃をベトナムから日本へ送金するにはどうすればよいですか?
原則として、賃料はまずベトナム国内の銀行口座で受け取り、納税義務を果たしたうえで、適法に得た所得であることを示す証憑(賃貸借契約・納税証明など)を揃えて海外送金します。送金時は銀行が出所書類の提出を求めるため、契約書・入金記録・納税記録という「外貨の足跡(マネートレイル)」を最初から一貫して残しておくことが重要です。手続きの詳細は[不動産売却資金の海外送金](/ja/guides/repatriation-of-funds-vietnam-property)も参照してください。
入居者の一時滞在登録(temporary residence)はオーナーがやる必要がありますか?
ベトナムでは、賃借人が居住を開始する際に地域の公安(警察)へ一時滞在の届出を行う義務があり、貸主側にも協力・届出の責任があります。届出は契約・入居後ごく短期間(24時間以内が目安)に行う必要があり、怠ると双方に罰金の可能性があります。海外在住オーナーは、この届出を管理会社や代理人が代行する形にしておくと安全です。具体の運用は変動するため現地で確認してください。
ピンクブック(権利証)の原本は誰が保管すべきですか?
ピンクブック(土地使用権・住宅所有権証明書)は所有権を示す最重要書類です。原本を管理会社や第三者に預けっぱなしにするのはリスクが高く、原本はオーナー自身が安全に保管し、手続きには公証済みコピーや限定的な委任状で対応するのが基本です。紛失・無断使用を防ぐため、保管場所と委任範囲を明確にしておきましょう。
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